あれから30年、今と当時を比べてみると

それ以来、読書感想文でお金を儲けようとすることはやめた。中学生からは、ようやく毎月のお小遣いがもらえるようになった。あれだけ欲しいと思っていたお小遣いなのに、なんの苦労もせずにただ生きているだけで貰えるお金は、無敵なんかにはなれない、ただのお金だった。

自分の読書感想文だけを書く夏休みは少し物足りない気がしたが、他にも山のように宿題があったので、そのうち忘れていった。友達は結局、それからもあまりできなかった。

あれから30年。気づけば私は、あの頃と同じようにまた本をしこたま読んで、文章を書いてお金をもらっている。

今思い返すと、なあんだ、欲しいものはあの頃と何一つ変わっていないじゃないか、とうんざりする。認められたいとか褒められたいとか、考えていることは呆れるほど小学生の頃と同じだ。変わっていないどころか、嫌な特性が悪化していると言ってもいいかもしれない。私は今や賞賛や名声が何よりの大好物で、他人の承認を喰らって大きくなるモンスターと化している。

ただ、あの頃と違って夏祭りの屋台では、好きなものを好きなだけ買って食べられるようにはなった。好きなだけと言ったところで承認欲求モンスターは意外と少食で、あれもこれも食べたいと食べたいものリストを作って挑む割に、焼きそばとクレープくらいでお腹いっぱいになるけれど。本当はもうきゅうりの一本漬けとかでいい。胃はしっかりアラフォーだ。

ホリくん、アヤノちゃん、D小学校、F小学校のみんな、元気にしてますか? あのときはありがとう。そしてごめんね! 私は相変わらず、文章を書いてお金に換えてるよ!いつか会えたらそのときは「おまえすごいな、昔からすごかったもんな」と褒めちぎって称えて、私の鼻の穴をたくさん膨らませてね。よろしくお願いします。

 

※本稿は、『褒めてくれてもいいんですよ?』(著:斉藤ナミ/hayaoki books)の一部を再編集したものです。

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