本当に必死で、本当にバカだった

夕方だった。学校から帰った頃、先生から親に電話がかかってきた。顧客の一人、同じクラスの男子が親にうっかり話してしまい、学校に苦情が入ったのだった。私は母と二人、学校に呼び出され、怒られた。お金も返すことになった。全員の家庭を訪問して800円を返した。母は死ぬほど謝っていた。無言の帰り道の空気の重さは、今思い出しても胃がキリキリする。

「その子たちの学ぶ機会を奪ったんですよ」

先生には確かそんなことを言われた気がするけれど、あまり覚えていない。

私が書いたものを出した子たちも、もちろん怒られ、読書感想文は改めて自分で書かされたようだった。私にそそのかされ悪事に手を染め、罪悪感で数日ドキドキさせられたうえ、先生や親に怒られ、2学期に夏休みの読書感想文を書かされた彼らには、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

世界の全てが終わった気がした。大変なことをしてしまったとようやく気づいた。

お金はもうどうでもよかった。とにかく全てを成功させたかった。みんなに私のすごさを認めてもらいたくて必死だった。感想文を書くなんて大したことじゃないのに、とても喜んでもらえた。それと引き換えに手に入れたお金はとても大切な何かで、それが手に入ったことで、みんなと対等以上になれたと思った。たとえ1円も使わなくても無敵の私でいられた気がした。この仕組みを発見して実行した自分は、最高だとすら思っていた。本当に必死で、本当にバカだった。