「自分が長年抱えてきた生きづらさは、実は母からの過剰な期待と精神的な支配が大きな要因だったのだと気づいたんです」(撮影:宮崎貢司)
幼い頃から「いい子」を演じ、自分の気持ちを押し殺してきたという東ちづるさん。40歳のとき母と一緒にカウンセリングを受けたことで、それぞれが自分らしく生きられるようになったと言います(構成=内山靖子 撮影=宮崎貢司)

過剰な期待を寄せられ続けて

母が21歳で私を産んだとき、「子どもが子どもを産んだ」と言われたそうです。その言葉をはねかえすべく、母は育児書や教育書を何冊も読んで「良妻賢母」を目指し、「世間がどう思うか」を何よりも重んじながら、私と妹を育ててきました。

もともと、母はとても頑張り屋さんなんですよ。子どもの頃、私は母のすっぴんを見たことがなくて。毎朝、家族が起きる前に化粧をして身だしなみを整えてから朝ご飯を用意し、完璧な見た目のお弁当を作るんです。

父を見送ると自分も仕事に行き、夕方帰宅したらまた家事をする。お風呂に入った後に薄化粧までして……。

そんな母でしたから、娘の私に対しても要求するレベルは高かったのでしょう。「勉強も運動も頑張りなさい」「一番がいいのよ」「愛される人、優しい人になりなさい」と、口癖のように言っていました。

そんな母の思いを「愛」だと勘違いした私は、幼い頃からずっと頑張り続けたのです。学校のテストはほぼ毎回100点、毎年学級委員にも選ばれる優等生でした。

母の喜ぶ顔を見るとホッとする一方、《いい子》でい続けねばと、無意識のうちに「本当の自分」を押し殺して生きてきたのです。