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大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマがクライマックスを迎える中、平安時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まりました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「藤原道長の晩年と臨終」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

大団円を迎えた『光る君へ』

先日、大河ドラマ『光る君へ』はみごとに大団円を迎えました。

正直なことを言うと、ぼくはドラマが始まる一年前に「大丈夫かな?」と心配していました。

平安宮廷社会というのは、現代人にはかけ離れた空間です。衣食住すべてにおいて、それに人の精神も行動も、理解が追いつかない部分が多くあります。

ドラマは共感が命なのに、視聴者がついていけないんじゃないか、と危惧していたのです。

ところが、ところが。

素人判断は杞憂に終わりました。視聴率などの細かい数字は知りませんが、何よりぼくの周囲には、賞賛の声が溢れています。

戦国時代もしくは幕末を舞台とする「男ドラマ」であれば、歴史小説はあるし、類似のドラマがあるし、大河ファンなら工夫のしようは思いつく。でも今作は先例がなかったのです。

道なきところに新たに道を切り拓いた。そこが素晴らしい。

演者・演出・脚本家をはじめとするみなさんの努力は、高く評価されるべきでしょう。休日の夜のひとときを、楽しい時間にしていただき、ありがとうございました。