ジョブズの演説
よく選ばれる演説のひとつが、Appleの創業者、スティーブ・ジョブズの有名なスタンフォード大学の卒業式の演説である。特に「人生の点と点をつなぐ」一節が人気だ。
ジョブズは大学を中退した後、偶然見たポスターの美しさに惹かれてカリグラフィー(美しい英文字を書く芸術)を習ったが、この経験が10年後、Macintoshに美しいフォントを入れる思いつきを生んだ。
「人生は、後になってから、それまでの経験の点と点をつないできたのだとわかる。だから、自分のひらめきを信じ、自分の心に従う。その信念が人生を変える」
英語自体は短く難しくない。しかし、ジョブズの思いを汲(く)んで、そっくり同じに発音しようとすると、何度も練習が必要となる。
この一節の英語の原文は、スタンフォード大学が動画といっしょに公開している。動画では4分57秒から始まる30秒間、テキストにすると100語ほどを引用しよう。
英語のスピーチ原文:
Of course, it was impossible to connect the dots looking forward when I was in college. But it was very, very clear looking backwards 10 years later. Again, you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.
So, you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something ― your gut, destiny, life, karma, whatever ― because believing that the dots will connect down the road, it’ll give you the confidence to follow your heart, even when it leads you off the well-worn path. And that will make all the difference.
(公開されている原稿のテキストとは違うが、実際のスピーチを忠実に書き写した)
それぞれの読者が自分の心に響く「聴き音読」の素材となる演説を探すには、世界の著名な演説の動画を集めたYouTubeチャンネル、English Speechesを使うのが便利だろう。
このチャンネルでは、ケネディ大統領やキング牧師の歴史的な名演説から、話題になったエマ・ワトソンの国連でのスピーチ、最近の有名人のインタビューまで、多種多様なスピーチが揃っている。
動画には大きな字幕が表示され、演説者の顔を見ながら、注意深く声を聴いて発音練習ができる。リンクをたどると、スピーチの英文原稿や、背景情報も確認できる。
ただし、演説は英語コミュニケーションの真剣勝負であり、難しい単語や表現も多く、長いスピーチから気に入った一節を選ぶには、ある程度のリスニング力やリーディング力が必要になる。最初の音読素材としては、やや手ごわいかもしれない。