人を救うのはポジティブだけじゃない
中には「死」について書かれた歌詞もあった。ソロステージを飾ったYURIは、ソロパフォーマンスの曲を決めるちゃんみなとの面談で、中3の時に父親が亡くなったことを打ち明けていた。
YURIはソロでちゃんみなの「ハレンチ」の歌詞の一部をアレンジしたものを披露したのだが、亡き父に呼びかけるシーンがあり、その前には、父親の死を彷彿とさせるオリジナルの歌詞があった。その叙景詩がなんとも示唆的で、哀切な気持ちになり、思わず涙がボロボロとこぼれた。
やっぱり、アイドルやガールズグループというと、前向きさとか、明るさみたいな、人間をポジティブにさせてくれることが重視されている気がする。でも、人を救うのはポジティブなものだけじゃない。負の感情や、葛藤、絶望。あがきやもがき。生きていれば避けられない悲しみに共鳴できるものを人は求めていると思う。
でも、そういうものって多くはなかったから、ノノガのパフォーマンスで、私は今までに感じたことのない救いをどこかで感じた。
彼女たちは、いろんな枠組みを超えて、ただひとりのアーティストとしてステージに立っていた。
アイドルやガールズグループは、ステージに立つときは出来るだけ整ったものを披露するもの。そう思っていた。でも、ノノガでは、予定調和や一歩引いたものなんてかなぐり捨てて、全員が感情を全開にし、全身全霊で感情を、人生をぶつけていた。
波動、狂気みたいなものが、並々ならぬものがあった。見る人の人生を変える、という確固たる信念、決意。ここまで心の奥にガツンと響くような、魂を揺さぶられるようなパフォーマンスは初めてだった。その空気に触れ、温度や質感を感じられたことが、本当に財産だと思った。