歴史の宝庫・ギリシャへ

後日、実際にテレビ局から会社宛てに「正式依頼文書」が届き、「東京電力」の協力もとりつけることができ、ギリシャ9日間の旅に出ることになった。

節子も一緒に連れていってくれる、というラッキーな成り行きだった。歴史好きの私たちにとって、歴史の宝庫・ギリシャへの旅は楽しみでしかなかった。

中学校の修学旅行で、バスガイドをしていた当時20歳の節子さんに出会ったという坂本さん。その時に撮影した一枚(写真:『天国ゆきのラブレター』より)

ギリシャへは番組制作スタッフのほか、寛平さんの奥さん、寛平さんの親友でもある明石家さんまさんも同行した。

到着したアテネの空港は、香水と香辛料が入り交じったような独特な香りがした。初めて嗅ぐにおいに、異国に来ている、ということを実感させられた。

宿泊はアテネの中心部シンタグマ広場に面して立つホテルグランドブルターニュ。日本でいえば帝国ホテルクラスの一流ホテルだった。用意された部屋も日本のホテルとは比べものにならないくらい広く、ベッドのしつらえもぜいたくだった。

私たち夫婦は番組ゲストのような立場だったから、ロケにからまないときはホテルの周辺を歩いて回るなど、比較的自由に気楽に過ごすことができた。

※本稿は、『天国ゆきのラブレター』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。


天国ゆきのラブレター』(著:坂本雄次/主婦の友社)

本書では坂本さんと奥様の奇跡的な出会いから、手紙で育んだ愛、二人三脚で進んだマラソンへの道、節子さんが病に倒れてからの10年間が語られる。
出会いは坂本さんの修学旅行で中学生とバスガイドとして。一目ぼれしたものの、20歳の社会人が15歳の少年を相手にしてくれなかった。それでも坂本さんは手紙を送り、節子さんも返事をくれたため、文通が始まる。想いを募らせていく坂本少年に対して、大人の分別があり、ある事情を抱える節子さんは、簡単に気持ちに応えてくれたわけではなかった。屈することのない坂本さんに対して、徐々に気持ちを受け入れていく節子さん。前半は二人で苦難を乗り越え、夫婦として幸せになることを決意する様子が当時の手紙とともに。
お二人が結婚前に交わした手紙はなんと337通。サブタイトルの339通のうち、最後の1通は節子さんの棺の中に。一生を一人の人と添い遂げるのは簡単なことではない。そんな中で純愛を貫いたご夫婦は稀有な例なのかもしれない。それでも、坂本ご夫妻の61年は人を愛することの尊さを教えてくれる。