江原 もう少し具体的に伺ってもいいでしょうか。
倉本 たとえば……。このあたりの樹齢50年と思しき樹木が、一本いくらで製材所と取り引きされていると思いますか?
江原 うーん。数万円といったところでしょうか?
倉本 いいえ、390円だって言うんです。
江原 えーっ!
倉本 チップや合板に使用されると言うけれど、木だって生きているわけでしょう? しかも生態系という秩序を保ちながら営みを続けているのです。なのに、人間は身勝手すぎますよ。
江原 最近、熊が山から下りてきて人家を襲うことが増えていますが、なぜ山から下りてきたのか? が問題で。人間が自分たちの行いをかえりみない限り、解決にはいきつけません。
倉本 僕は森の中で熊に遭遇したことがあるのですが、気づかぬふりをしていました。ヤクザと一緒で、意識すると絡まれますから(笑)。すると、しばらくウロウロしていて、静々と森の奥へ帰っていきましたよ。
江原 怖い思いをされましたね。
倉本 怖くはなかったです。家の中から毎日のように野生の動物を眺めていますが、熊だって狐だって純粋で優しい「いい目」をしていますよ。昔は人間も同じような目をしていたんじゃないですかねぇ。