オペラは豊かさの塊
江原 たとえば森をどう演出するか、といったことですね。
倉本 山って3種類あるんです。我々人間が訪れる「里山」、猟師など限られた人しか入れない「奥山」、そして神の領域である「嶽(だけ)」。海外でも「ウッズ」「フォレスト」「テリトリー・オブ・ゴッド」と分類されています。
江原 『ニングル』の舞台は、奥山と嶽の間でしょうか。
倉本 ええ。カナダのハイッダグワイという島の深い森へ行った時に、サルオガセという地衣類の植物が、馬の尻尾のような形状で木から大量に垂れ下がっていたのが印象的でした。
それを参考に舞台上でどう演出しようかと考えていたところ、岩国を訪れた折、繊維工場で裁断されて糸のほつれた布が大量に捨てられているのを見つけて、コレだと。思わず「くれませんか」と頼みましたよ。
その点、オペラは贅沢で、舞台装置も衣装も豪華だし。演者のほかにオーケストラがいるのでしょう?
江原 はい。東京フィルハーモニー交響楽団の方々によるフルオーケストラでした。
倉本 何人くらいで編成されているんですか?
江原 60人ほどでしょうか。そのほかに、合唱の人が20人くらい、場面を盛り上げるためのダンサーもいます。