仲の良かった書店員
海外へ取材で出かけることが多かった40代から50代の時、訪れた街で必ず本屋を覗いた。
なぜ本屋へ?
本屋に並べてあるものは、その街の文化の程度をあらわしたり、街の人々が何を好んでいるかがわかる。
本屋はやはりヨーロッパの都市が充実している。パリの美術書が多い本屋、アムステルダムの写真集ばかりの書店、ニューヨークの大統領の自伝が並べてあるブックショップ。
夕刻、訪れたチャイニーズレストランに昼間会った書店員がいたりすると、思わず笑い合ったりした。
書店員で仲の良い人は数人しかいなかったが、中の一人に美しい女性がいて、私のどうしようもない本を丁寧に売ってくれた。
その人の姿が、或る時、店から失せ、ほどなく入院していることがわかり、短い手紙を書いた。退院を待ったが叶わず、彼女は早逝した。今でも彼女のお母さんと連絡を取ることがあるが、やさしく美しい人であったが故に、それ以降は書店員と関わるのをやめた。