『ラヴ・レターズ』はアメリカの劇作家ガーニー作の朗読劇で、幼なじみの男女が約半世紀にわたって交わす手紙による恋物語。別々の道に進んだ2人が再会して激しく惹かれ合う、という作品で、何組もの男女俳優コンビでくり返し上演されている。
――まず一緒にホン読みやった時に、自分のできなさ加減をまざまざと思い知らされたんですね。最初、奈良岡さんがやると7歳の少女にしか聞こえない。でも俺は子供の声は出せない。
物語が進むと、奈良岡さんの役の姿がどんどん役柄の年齢とともに明確になってくるけど、自分のは何か届かない。
すると奈良岡さんがだんだん不機嫌になってきて、しまいにはいらいらしだしてね。俺の滑舌は悪いし、ブレスは悪いし、声も届かないし、発声もよくないし、全部ダメじゃない、みたいになって。
その時に、本物の舞台役者になりたいから、もう一回稽古つけてください、って頼んだら時間を作ってくれて。まぁ前よりはいいわねとなり、本番です。
結構いい感じで進んで、最後の手紙の場面になったら悲しすぎて嗚咽状態になって、1分か2分、台詞が言えなくなった。その時はもう、お客さんもみんな泣いてましたね。
でも、幕が下りたら奈良岡さんから、「あのね、練習不足だからああなるのよ。台詞が言えなくなるのは役をちゃんとやってないからよ。泣きゃいいってもんじゃないわよ」って忠告されて……。