母の愛を弟にとられたくなくて
私には2歳年下の弟がいる。私の生まれて初めての嫉妬は、たしかに弟に対するものだった。
あれは弟がまだ常にベッドに転がっていた頃。彼が1歳で、私が3歳くらいだろうか。私が母を相手に一生懸命に絵を描いたり説明をしたりしているとき、決まっていいところで弟がギャーギャーと泣き始める。どれだけ私が上手く絵を描いても、楽しくお喋りしていても、あの不快な音が聞こえるといつも母は瞬時に私に対する興味を全て失い、弟のもとへ急いで向かった。
いつだったか、大人が誰もそばにおらず1人でギャーギャー泣き喚いている弟の顔に、上から布団をぎゅーっと押し付けたことを覚えている。窒息させようと思っていたかどうかは定かではないが、とにかく目の前で発せられているこのギャーギャーとうるさい音を止めたかった。そうすれば、母はもっと私の話を聞いてくれるだろうと思ったのかもしれない。
母とはこの後いろいろあったので「母の愛を弟にとられたくなくて嫉妬した」とここに書くのは、実はとても恥ずかしい。
布団を押し付けたものの、うるさかった弟の声が途切れて一瞬シーンとしたことが急に怖くなってしまい、すぐに布団を剥がしたので、弟は今も元気に生きている。