小さい体と心で叫んでいる
時が経ち、今度は自分が子どもを育てる立場になった。私の子どもは3歳違いの息子が2人だ。
長男は4歳の頃に、赤ちゃんがえりの片鱗を見せた。ある日、次男の授乳クッションが突然消えたのだ。授乳のタイミングに、どこを探しても見当たらない。仕方なくクッションなしで座布団を畳んで代用したのだが、しばらくすると長男が隠していたことが発覚した。
「ママ、いつもおっぱいあげてばっかりで僕と遊んでくれないから」
と。
まだ生まれて4年しか生きていない小さな小さな長男が、もっと小さな、生まれたばかりの次男に対して嫉妬をしている様子を見て「ああ。この子は今、私の愛を失う不安に襲われているんだ!」と感動した。
長男はこんなに小さい体と心で、ちゃんと嫉妬をして、生きようとしている。愛されたいということを自分ではまだわかっていなくとも、こうやって全身で叫んでいるんだ、とたまらなく愛おしく思った。
やはり嫉妬という感情は、人間が生まれながらに「愛されたい」「生きたい」と感じていることの証なのではないだろうか。
長男がかわいい嫉妬を見せてくれるたびに、大丈夫だよ、君をとても愛しているよと多めに抱きしめることにした。そんなもん、なんぼでも抱きしめるよ! ぎゅー!
その甲斐あってか(?)現在14歳になる長男は、私に似ないで済み、明るく真っ直ぐで友達もたくさんいる良い子に育った。そんなに嫉妬深くもない。
しかし、現在の彼は
「小さい頃、弟に嫉妬していたことがあったよ。そのたびにこうしてぎゅーっと抱きしめてあげると嬉しそうにしていたよ」
と私が抱きしめようとすると
「やめろ、マジで!」
と振り払い、スマホを持ってどこかへ行ってしまう。
ちくしょう。たまにはあの時みたいに私の愛を猛烈に欲してくれてもいいのに。
もう! 彼女とLINEしてばっかり……!
今は私の方が、長男の彼女に嫉妬している。くそう。