いつもニコニコしながら私の後をついてきた

幼少期の弟は、姉の私から見てもとてもかわいかった。母に似て色が白く、目がくりっと大きく、ほっぺはバラ色。対して、私は父にそっくり。肌は黒く、骨が太くゴツゴツしていて、鼻は魔女みたいな鷲鼻だ。髪も常にショートだったので、どこへ行っても男の子と間違えられた。

母は、かわいくておとなしい弟が大好きで
「負けず嫌いで頑固なあんたが男の子で、優しくてかわいい弟ちゃんが女の子だったらよかったのに」
といつも言っていた。確かにそうだな、と自分でも思ったけれど、母がそう言って弟をあからさまにかわいがる様子は面白くなかった。

私の方が年上だし、賢いのに。いつでもどこでも何もかもあいつが最優先。弟さえいなければ……と何度も思ったし、面白くないことがあると母が見ていないところで弟の腕をつねったり、オモチャを隠していじわるしたりもした。でものんびりとしていて気の優しい弟は、いじめられてもあまり気にしていない様子でいつもニコニコしながら私の後をついてきて、それもまたムカついた。

そんなムカつく弟だけど、私が遊ぶ相手は弟しかいなかった。転勤が多い我が家はどこへ行っても近所のコミュニティとあまりうまく関われなかった。母も人見知りする人間だし、頑張ったところでどうせまたすぐ転勤だ。

幼い頃の斉藤ナミさんと弟さん
嫉妬もしたけど、貴重な遊び相手でもあった弟

近所の女の子たちには家族ぐるみのグループができていて、そこに「一緒に遊んで」と混ざれる機会は少なく、だいたいいつも弟と2人で公園で遊んでいた。しかしのんびりしていてトロい弟と遊んだってたいして面白くもない。しばらくすると私は虫を捕まえたり、葉っぱや石で絵を描いたりするのに夢中になってしまっていて、気づくと弟がいない、ということがしょっちゅうあった。

弟は? と周囲を見渡すと遥か遠くの方で、体の大きい知らない子どもに公園の遊具をとられて泣いている(ように見えた)。
弟を守らなきゃ! という気持ちと、そんな悪いことをするヤツを許せない! という気持ちが一瞬で湧いてきて、体が勝手に飛び出した。