ここまで来られたことを、天に感謝している
危うかったのが、3年程前のミュージカルの公演中のこと。朝起きると右腰のあたりがメチャクチャ痛い。
3歩も歩けない……!マズい!こりゃマズい……!!これは前にやったギックリ腰とは違う痛みだ。しかし、何としても劇場に行かなければならない。
とりあえず患部に湿布薬を貼って、痛み止めを飲み、腰ベルトをギュンギュンに締め、劇場に向かった。
こりゃあ前日の休演日にゴルフの練習でボールを打ちすぎたからに違いない。自業自得だと思ったが誰にも言えない。
とりあえず共演者達には、「ギックリ腰になったのでよろしく!」と一言添えて舞台に立った。芝居中はそれほど感じなかったが楽屋に戻るとまた激痛が走った。
その日以降は相当にきつかったが、なんとか千秋楽までは持ち堪えた。いや、持たせたと言べきか。
それでも他人から見ると私は相当強靭な体力の持ち主に思えるらしい。「徳馬さんの体力には感服します!」若手から言われると「まぁな」と見栄を張る。
名演出家の蜷川幸雄さんに言われた。「おい徳馬、いい役者達いっぱいいたけど、みんな酒でだめになるなぁ、お前も気をつけろよ」と。
「無事これ名馬」は俳優にも言えるのかと思った。兎にも角にも、なんとかここまで来られたことを、天に感謝している。
「喜」という字を草書体にすると「喜欠」となり、17の上に7が付くことに由来する「喜寿」だが、77歳まで生きて来られた証(あかし)、この言葉は実に喜ばしい。
思えば、あっちに行き、こっちに転び、あれに泣いたり、笑われたり、21回もの引越しを繰り返し、紆余曲折している我が人生。その度に受けた数々の指南、ヒント、鍵、アドバイス、啓示。
これらを記すことによって、もしやどなたかの生きる力の足しになるかも知れないと、そんな思いから発して、この一風変わった78年の我が人生を振り返ってみようかと思う。
※本稿は『未完成』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『未完成』(著:西岡徳馬/幻冬舎)
「まだ、足りねえ……!」
人生は演じることの繰り返し。喜びも悲しみも、演技こそが己の魂を呼び覚ます。
懸命に生きる全ての人へ、お祭り騒ぎの初自伝!!
新境地を開いた「幕末純情伝」、一世風靡した「東京ラブストーリー」。そして2024年、エミー賞最多部門賞受賞「SHOGUN 将軍」。高倉健、勝慎太郎、つかこうへい、蜷川幸雄、杉村春子といった英傑たちの等身大の生き様。
人生78年。役者歴半世紀以上。
無尽蔵のエネルギーでいつの時代も新しく、発展途上で生きる。
彼の勢いを止めることなんて誰にもできない!