介護する家族の悩みに答える仕事

私は、大学卒業後、外資のコンサルタント会社に勤めていたのですが、「人の支援」に関わりたいと、介護の世界に飛び込みました。

そして、自宅で寝たきりの方の訪問入浴サービス、老人ホーム、認知症の方専門のデイサービスで働いたあと、現在は、8社ほどの民間企業と契約をして、主に介護する家族の側の相談に乗っています。

とある懇親会で、働きながら認知症の叔母の面倒を見ている方の相談に乗ったのがはじまりです。それをきっかけに、企業から依頼を受けるようになりました。

デイサービスや訪問入浴に携わっていたときは、介護する家族の側の悩みがそこまで深いとは気づきませんでした。

そもそも、介護保険で受けられるサービスというのは、あくまで高齢者の自立を支援するものであって、介護をする家族のためのものではありません。

ケアマネジャーにしてもホームヘルパーにしても、高齢者の支援をしてはじめて報酬がもらえるわけですから、家族のケアはどうしても片手間になりがちなのです。

相談を受けはじめた頃、誰もが知る最先端の企業に勤めていながら、親の介護のために、今にも仕事を辞めようとしている方に出会って、慌てて止めたことがあります。

その方の能力を失うのは会社にとって損失だし、何より、直接介護をしても絶対うまくいかないのがわかっていましたから。

テレワークができそうなので、実家に帰って親の面倒を見ようとしている方には、「いつ転ぶかわからないお父さん、お母さんがいるところで、パソコンを広げて仕事に集中できますか?」と問いました。

そしてこういう方々に、「近くにいてたくさん面倒を見ることが、いい介護ではありませんよ」と伝えてサポートすることが、結果として家族による高齢者虐待を未然に防ぐことにつながるのではないかと思ったのです。

 

つい声が大きくなってしまう…(写真:stock.adobe.com)