これからは〈自分介護〉の時代へ。2040年には、単独世帯が900万世帯に達するという予測があります。特に、65歳以上の単独世帯数の増加が推測されています。日本の家族構造は大きく変容して、これまで頼りにしていた家族相互助け合いシステムが崩壊しています。高齢者を包括的に支援/実践している団体「リボーンプロジェクト」が、介護の事例と、専門家のアドバイスを編集した『じょうずに頼る介護 54のリアルと21のアドバイス』より一部を抜粋して紹介します。
相続はしたものの持て余す実家
実家の後始末:苦節10年、頼みの綱の妹が倒れ実家の維持はもう無理!
94歳の母を見送った10年前、実家の山、畑、150坪の宅地のほかに100坪の分譲用宅地もすべてを相続した和子さん(78歳)。
不動産のほかには数百万円の預金があるだけ。これが、明治から4代150年続いた実家の総財産だった。
相続人は和子さんと妹の明子さん(72歳)の二人姉妹。共同名義も考えたが、明子さんの「すべてお姉ちゃんに任せる」という言葉で和子さんは覚悟を決めたという。
それでも、分譲用として母が造成していた宅地は2年以内に500万円で売れた。こちらの現金は妹と折半したが、実家の後始末を考えたら残った資金でいつまで維持できるか、和子さんは不安だった。
中国地方の山間にある実家は、決して便利な場所にあるわけではないが、年に1度は妹家族が別荘代わりに利用したり、法事や墓参りのたびに親戚が集まる場所として重宝してきた。
「それもコロナ禍前まででした。母が存命中から水回りや建具の修繕、リフォームはやっていましたが、なんせ築90年。
家は何かと不具合を起こします。畳替えやふすまの張り替え時期を迎えて、その都度100万円単位で出金が続き、固定資産税や電気、ガスも維持しておこうと思うと、年単位で出費もかさみました。
いつまで維持すべきか悩ましい。妹と二人で何回か通ってぼちぼち遺品整理はしていましたが、ここ3、4年は訪れる人もなく、私も年をとって月に1度の実家通いも間遠になっていきました」