売却か賃貸か、空き家のままでいいのか

人が住まない家屋はあっという間に劣化していく。

留守を頼んでいた近所の人から「瓦がずれてるよ」とか「裏の木戸が壊れているみたい」「土蔵の壁が落ちている」などご注進が入ると、近所の人も不安なんだと申し訳なく思えてくる。

万一、不審者でも入り込み、火事でも起きたら……と気が重い日が続いた。そんなとき、妹が倒れたという知らせが届く。

「私の長男は外国暮らしで帰ってくる気配がありません。娘は、『お母さんの代でなんとかしてよ! 私は相続しないからね』と言い放ちます。妹まで倒れ、万事休すだと思いました。以来、実家の家屋だけではなく、山や畑やお墓の映像が重苦しくのしかかってくるようで、コロナ禍のうつうつとした気分と合わさって寝込みそうになりました。

私自身、相続したときは60代でまだ元気がありましたが、後期高齢者ともなると体力も落ちていく一方で、片道1時間半の実家までのドライブもおっくうになってきましたから、もう無理!って」

 

じょうずに頼る介護 54のリアルと21のアドバイス』(編:一般社団法人リボーンプロジェクト/太田出版)