甲状腺に腫瘍の疑いあり

病棟も落ち着いているし、午後からの外来の前に昼ご飯を食べてしまおうかな。

そんな能天気なことを考えていると、岡田さんが表情を変えて話しかけてきました。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

「……先生、頸動脈は大丈夫なんですけど、甲状腺がちょっと……。いくつか腫瘍っぽいものが見えます」

「えっ……」

静まり返った検査室。私は驚きのあまり、言葉を失ってすぐに返答することができませんでした。

「この画像、甲状腺の専門の人に見てもらいますね。またあとで連絡します」

そう言われて検査は終わりになりました。検査着からスクラブに着替えて、昼ご飯を食べることもせず、私は緩和ケア病棟に戻りました。このとき、私は上の空でどのように病院に戻ったか覚えていません。