効率を求めすぎて失敗しづらい世の中
山口 失敗するのが嫌な自分を克服するための自炊という意味合いもあると思うんですよ。仕事で何度も失敗するのは、迷惑をかけたり評価が下がっちゃうからあんまりできないけど、自分で食べるだけならいくら失敗したって別にいい。
佐々木 この間もにんにくが焦げ焦げになったんですけど、だからみんなあんなに「弱火で、弱火で」と口酸っぱく言っているのか……とか。
山口 その失敗を通らずに、いい感じのにんにくって作れないと思います。ギリギリが美味しかったりもするし、焦がしにんにくも思いっきり焦がしたことがないとわからないですし。
佐々木 何か料理を失敗しても、その分学んだと思えばお釣りがくるというか。
山口 この間、煮魚の煮汁が少なくて、ちょっと放っておいたら焦がしちゃったんです。でも皮は食べられなくても、身は食べられる。効率を求めすぎて失敗しづらい世の中になりましたよね。だけどたとえば、絶対にボールが打てる便利なバットが発明されたとして、誰もそれを良いとは思わないはずなんですよね。野球は打てたり打てなかったりするからこそ面白い。こういう、不便の中にこそ良さがあるという「不便益(ふべんえき)」という考え方があります。料理も失敗するからこそ、美味しくできたときになおさら嬉しいんですよね。
※本稿は、『自炊の壁 料理の「めんどい」を乗り越える100の方法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
『自炊の壁 料理の「めんどい」を乗り越える100の方法』(著:佐々木典士、山口祐加/ダイヤモンド社)
初心者だろうと、日々料理を作る人だろうと、平等に立ちはだかる【自炊の壁】──。
「どうすれば、自炊を楽しく続けられるのか?」を図解やイラストを交えながら、100のテーマで解き明かします。
コンビニ弁当をかごに入れる前に、レシピで眉間にしわを寄せる前に読んでほしい一生モノの“自炊”啓発書。