「芝居をやりたいのに撮影所に行かねばならないと変な思いでしたが、冗談まじりに〈稼いでこ~い!〉なんて言われて」(撮影:木村直軌)
戦争を伝える朗読劇を30年続けてきた、劇団俳優座の岩崎加根子さん。終戦を迎えたのは12歳のときでした。戦争体験を経て女優となり78年。今、演劇を通じて伝えたい思いとは(構成:篠藤ゆり 撮影:木村直軌)

前編よりつづく

劇場を建てるため映画の世界へ

劇団俳優座の8人ほどいる創設者の一人、演出家の千田是也先生は「養成所は勉強をするところ、まだ芝居に出てはいけない」と言ってらしたのに、「チェーホフは『桜の園』のアーニャ役を若ければ若いほどいいと言っている」と、18歳で最年少だった私にアーニャの役をふってくださった。母親のラネーフスカヤ役は、東山千栄子さんでした。

千田先生は、劇団は劇場をもたねばと強くおっしゃって、六本木に劇場を建てることに。そのためには、お金が必要です。そこで、私も映画に駆り出されることになったのです。

芝居をやりたいのに撮影所に行かねばならないと変な思いでしたが、冗談まじりに「稼いでこ~い!」なんて言われて(笑)。

ギャラのことはよくわからないけれど、たぶんすべて俳優座に入っていたんでしょうね。東野英治郎さんや東山さんなど、先輩総出で映画会社と契約して映画に出ましたよ。