戦争を伝える朗読劇を30年続けてきた、劇団俳優座の岩崎加根子さん。終戦を迎えたのは12歳のときでした。戦争体験を経て女優となり78年。今、演劇を通じて伝えたい思いとは(構成:篠藤ゆり 撮影:木村直軌)
芝居を続けるのが健康の秘訣
2025年1月と2月に、紀伊國屋演劇賞個人賞と読売演劇大賞最優秀女優賞、2つの賞を受賞しました。24年に主演をつとめた『慟哭のリア』や、劇団俳優座特別公演「戦争とは…vol.30 『被爆樹巡礼』『犬やねこが消えた』」での演技を評価していただいたようで、本当にありがたいと思っています。
『慟哭のリア』はシェイクスピアの『リア王』を下敷きに、明治期の筑豊炭田を舞台にした作品です。私は亡き夫の遺志を引き継ぎ、一代で炭鉱を繁栄させた女主人・室重セイ役。そういう人は私のまわりにいませんし、役を掴みにくい。
師匠であった千田是也先生は常に「その人物になったつもりでおやり」とおっしゃっていたので、いろいろ想像を巡らせ、自分は室重セイだと思って舞台に立ちました。
人は否応なく歳をとっていきます。私はこの秋、93歳になりますが、歳のことを考えている暇はありません。今年は3月から『猫、獅子になる』という作品で全国をまわり、100ステージつとめます。まずは2ヵ月間、1回も東京に戻らず旅公演。
旅の前に3日間だけお休みがあったのに、このインタビューで1日つぶれちゃったわ(笑)。その作品とは別に、夏には劇団俳優座の特別公演「戦争とは…vol.31」の舞台に立つので、その前に40日間、稽古があります。