「過去」の延長線上に「今」はない

日本曹洞宗の開祖である道元禅師は、主著『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』で、

「薪(たきぎ)は燃えて灰になる。灰になったら、もう元の薪には戻らない。それと同じように、人間も一度死んだら、もう元の命には戻らない」(現代語訳)

と述べています。

一見すると、「人生は一度きり。死んだら終わり」という無常観を示していますが、じつはそれだけではありません。「人間の死は、生の延長線上にある」と考えがちですが、生きているときは精一杯に生ききり、死が訪れたら死にきればいいと教えています。

つまり、過去はすでに終わったものであり、いつまで悔やんでも、過去の状態には戻らないということです。

過去を引きずるのではなく、そこから学び、今の自分をどう成長させるか。

今、この瞬間を大切に生ききる」ことを意識してみてはいかがでしょうか。

 

※本稿は、『「し過ぎない」練習』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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