ライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間勤務しながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります
忘れられない映画の1シーン
忘れられない映画の1シーンがある。名匠ケン・ローチ監督の映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016年制作)の中で、主人公のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)と親交のあるシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)が、ボランティアの運営するフードバンクに行った時、空腹がひどくて、その場で缶詰を開けて食べてしまい、泣き出すシーンだ。
この映画は、大工のダニエル・ブレイクが心臓病で医師に休職を告げられたが、福祉の対象にならず、苦労をしいられるというイギリスの当時の社会保障を描いた話題作だ。第69回カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞している。
私が40代の時、両親が借金を返済できず、信用金庫から「お金を払わないと担保になっている自宅をもらう」と言われていた。その時、人間にとって一番大事なのは『住まい』だと確信。
住宅に悩んでいた友人とともに、「1日菓子パン1個でもなんとかなるけれど、路上生活は大変だ。住まいが一番大切」と話していた。お互いに現役で働いていたので、菓子パン1個は買えると思っていたのである。