お産疲れの私はなすすべもなく……

分娩室と同じフロアに病室があったので、その「総動員でかかりっきり」は手に取るようにわかり、私は、自分でできることは静かに自分でした。放っておかれたのは、新生児室の息子も同じだったようで、ひたすら泣き続けていた。

今なら、何の迷いもなく、新生児室の彼を奪ってきて、自分の胸に抱いて一晩過ごしただろう。しかし、新米ママの私は、新生児を普通の病室に連れてくることの是非がわからなかった。

『子育てのトリセツ 母であることに、ときどき疲れるあなたへ』(著:黒川伊保子/ポプラ社)

そのころの産科学では、新生児は、清潔な新生児室に置いておくもので、母親と寝かせたりはしないのが常識だったのである。お産疲れの私はなすすべもなく、ベッドでうとうとしながら、彼の泣き声を聞いていただけだった。

後に、母子同室を推奨する産院が増えて、私は深く傷ついた。考えてみれば、そちらの方がずっと自然だ。なぜ、あのとき、私は気づいてやれなかったのだろう。