掲示板ってひとり語りは駄目なんです
三浦 そもそも、なぜ男性は家族の問題や自分のことを誰かに話しづらいんでしょう?
スー よく聞くのは、男性は友達も含めて同性が全員ライバルだから、弱いところは絶対に見せられないし、序列をつけられるから自分の内側の悩みは誰にも見せられないと。だから、嫌なことがあった時は「なぜか」と理由を内側に突き詰めるのではなく、外のことに意識を逸して立ち直るらしいです。
三浦 なるほど。先日企業で働く男性たちに、「『婦人公論』では“老後資金”“介護”“終活”“健康”“家族を亡くして”などのテーマが人気。それらはこれからの人生で向き合うべき課題なんです」と話したんです。すると一人が「親の介護とか老後資金とか、そういった問題が自分の身にも起きうることだと薄々気づいてはいたけれど、蓋をして見ないようにしてきた。突きつけられるとショックです」と発言して、会場からは共感のうなずきが(笑)。
女性は自分や家族のことで気になることがあると、『婦人公論』を買ったりいろいろ調べたり、友達と話したりして“人生の予習”をする。だけど男性は、人生の課題を課題と見ないようにしている傾向があるのかもしれません。
スー ラジオの男性スタッフのなかにも、「自分のことなんか絶対に知りたくない」って言う人がいますね。受け止めきれないから絶対嫌だって。本当の自分が理想の自分とどれだけ乖離しているかを認識したら、もう立ち直れなくなっちゃう、と。中村うさぎさんだったと思うんですけど、「男はとにかく外へ外へと意識が拡張していって、女は中へ中へと向かう」って仰っていて。男は社会とか経済、政治、海外……を制覇して、最終的にみんな月に行きたがる。
三浦 前澤(友作)さんや堀江(貴文)さんだ。(笑)
スー 逆に女は、どんどん内側に掘っていく。確かに女の人って掘りすぎると前世まで行きますよね。
小坂 行く行く。(笑)
スー 男性にとって、家庭や日常生活のことは取るに足らないことっていう認識なんですかね。
小坂 私は新聞の家庭面を長く作ってきたのですが、家庭や生活から見える社会問題ってすごくいっぱいあるんです。たとえばDVにしても児童虐待にしても、最初は問題とは認識されていなかった。でもその中に貧困だったり、男女の関係性の問題だったりが実は隠れていたわけです。時代の変化とともに、そこがだんだん社会問題化していく。だから「発言小町」のたくさんの書き込みの中には、「社会が変わっていく」ための種がいっぱいあると思うんですよね。
スー そうですね。『これでもいいのだ』に、「風邪をこじらせたパートナーに気を利かせたつもりが……」という話を書いたのですが。
三浦 あのエッセイは雑誌掲載時から共感を呼びましたよ。スーさんが気を利かせて夕飯を買って帰ったら、パートナー氏も夕飯の準備をしていて――という。
スー 私とパートナー氏との関係は世間的に普通とされる男女の役割とは真逆。でもこれからの時代、そういう関係は珍しいものではなくなってくるわけで。そしたらまた新たな問題が生まれてくるんでしょうね。
小坂 弊社の男性記者が、「イクメンブームもあるし、子育てをしなきゃいけないのは重々感じているけれど、現実問題として仕事がたくさんある。自分としては一生懸命やっているつもりだけど、妻からはそんなことはないと言われる」というような問題意識を、『これって産後クライシス?』というかたちでOTEKOMACHIで連載しました。
この連載が大変好評だったのですが、要は等身大の、働き盛りの男性が本音を打ち明けることに意味があったということかなと。男性記者の中からそういったことを書いてみたいという人が出てきたこと自体が、私としてはすごく嬉しかったですね。
三浦 先ほど話していた「発言小町」の、『僕だって疲れてますが』というトピックと同じベクトルですね。