戦略的な学校設計

設立当初は、「アホの学校だ」とか「どうせダメだろう」という誹謗中傷が殺到するだろうと予想していました。また、営利企業が関わっているため、「金儲けが目的だ」という揶揄も来るだろうなあと予想されました。これらの批判を防ぐことが僕たちのテーマのひとつでした。

そのために、N高の戦略も計画もできるだけ世の中に公開することにしました。まず、僕らが本気で教育を変えようとしていること、そのために資金を大いに投入していて、明らかに儲からなそうだということを世の中にはっきりと見せることで、業界の人々に「金儲けが目的というのはちょっと違う。彼らはなにかわからないけど本気だ」と思ってもらえるようにしました。そうやって、教育の世界に資本主義のルールを持ち込もうとしているという、ありがちな批判が出にくいようにしたのです。

実際、僕たちは、できるだけ善いことをしよう、正しいことをしようと考えており、それを戦略として実行しています。これは同時に、業界の人々からいわれのない批判や非難を受けないようにするためです。

また、誹謗中傷を防ぐために、普通の学校では提供できない最先端の実践を取り入れようと考えました。たとえば、完全オンライン化された高度な教育システムや、質の高い教材の提供です。また、部活動についても、「eスポーツ部」のプロによる指導など、担任教職員の犠牲的なボランティアに頼らない組織的なサポート体制を整えることで、既存の学校の教職員が、「うちでもやってほしい」と応援したくなるような環境をつくっています。

こうした取り組みによって、批判や揶揄を言われにくくし、むしろ普通の学校の生徒がうらやましがる要素を増やすように初めから設計したのです。

※本稿は、『教育ZEN問答-N高をつくった僕らが大学を始める理由』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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教育ZEN問答-N高をつくった僕らが大学を始める理由』(著:川上量生/中央公論新社)

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