ベッドが隣だったCクン

Cクンとは2段ベッドが2台ある4人部屋でベッドが隣だった。

同室になった日の夜、ボクが持参してた電子辞書に興味を持ったCクンと電子辞書を使いながらお喋りして盛り上がった。

翌日、もし夜にまた会えたら一緒に飲みに繰り出そうと提案され約束をして日中は別行動をして、部屋に帰るとCクンがいて「今帰ってきたところ」とニコッと笑い「タカシが大丈夫ならこのまま飲みに行こう!」と誘ってくれた。

もちろんOKで電子辞書片手に近くのパブで乾杯をした。しばらくしたら女性のふたり組がそばに来て「一杯おごってほしい」と言われ、Cクンは「どうしたの?」とふたりに席を譲って話しだした。ボクには詳しいことはわからなかったのだが、地元に暮らすふたりは、どうやらその日仕事をクビになって落ち込んでいるようだった。

Cクンは優しくうなずきながら話を聞いてふたりにビールを注文した。

ふたりは話を聞いて励ましてくれるCクンの優しさが嬉しかったようで、最後は笑顔になっていた。電子辞書なんて追いつかず、話がわからないボクはCクンとふたりの女の子の表情を頼りに、わかったようなわからないような相槌を打っていた。

途中から「こういうやり方でおごらせる手口か?」なんて思いながら「もう会計しようかな。ご馳走すればええねやろ」ぐらいの気持ちでいた。最後はボクまでふたりにハグを求められて、その日は終わった。

『マ・エノメーリ』(著:藤井隆/KADOKAWA)