歩道の隙間、建物の陰、水面……街を歩くとあちこちで雑草に出会います。「それぞれの植物たちが、すばらしい“個性”を秘め、それらを武器として生きぬいてきている」と語るのは、甲南大学名誉教授の田中修さんです。今回は、田中さんの著書『雑草散策-四季折々、植物の個性と生きぬく力』から一部を抜粋し、身近な雑草たちを紹介します。
ハート形の小さな3枚の葉
野原や空き地、家の庭や路傍などに、ハート形の3枚の小さな葉っぱを展開している植物が、多く育っています。これらの3枚の葉っぱは、植物学的には1枚の葉っぱであり、ハート形の一枚一枚は「小葉」とよばれます。この植物では、3枚のハート形の小葉が特徴です。
この植物は、3枚の葉っぱを広げる印象がよく似ているクローバーと間違われることがあります。でも、クローバーの三つ葉の小葉は、それぞれがハート形ではなく、先端に切れ込みがない卵形です。
この植物は、カタバミです。
クローバーには、見つけると「幸せになれる」とか「幸運が訪れる」とかいわれる「四つ葉」がありますが、カタバミでは、四つ葉を見かけることはありません。