葉っぱには「シュウ酸」が含まれている

カタバミやムラサキカタバミの葉っぱには、すっぱい味のする「シュウ酸」という物質が含まれています。「シュウ酸」は英名を「オキザリック・アシッド(oxalic acid)」というのですが、この名はカタバミの属名「オキザリス」にちなんでいます。「オキザリス」は、ギリシャ語で、「すっぱい」を意味します。この性質にちなんで、漢字名は「酢漿草(さくしょうそう)」と書かれることがあります。

カタバミは、この物質を含んでいるので、10円玉を、ピカピカにします。この植物の数枚の葉っぱを摘み取り、古くて光沢を失った10円玉に押しつけるようにこすりつけて、磨きます。みるみるうちに、こすった部分はピカピカになります。新鮮な葉っぱを追加して、全体をくまなく磨けば、古い10円玉は、たちまち、ピカピカの10円玉になります。「なぜ、すっぱい味のする物質をもっているのか」との疑問がありますが、すっぱい味で、虫などに食べられることから身を守っていると考えられます。その通りに、カタバミの葉っぱは虫にあまり食べられていません。

カタバミの葉で磨いた10円玉 磨く前(左)と磨いた後(右)(写真:『雑草散策』より)

ただ、シジミチョウだけが、この植物によく飛んできます。シジミチョウは、カタバミが好きなのです。シジミチョウの一種のヤマトシジミが卵を産んで育てる植物が、カタバミなのです。他の虫が来ないのに、この限られたチョウだけが来るのは、「タデ(蓼)食う虫も好き好き」という言葉で理解できそうです。

この植物の葉っぱは、形が単純で、デザインとして美しいものです。そのうえ、この植物は、大地にしっかり根を張り、旺盛な繁殖力で子孫を繁栄させます。そこで、その姿を家運の発展と家系の安定に見立てて、家紋として使われ、わが国の人気のある家紋の一つとなっています。

カタバミの家紋(姫路剣片喰)(イラスト:『雑草散策』より)

南北朝時代の源氏の一族や、四国の武将であった長曽我部家、江戸時代中期に姫路城主を約100年間務めた酒井家などが、カタバミを家紋としていたことが知られています。