オナモミ(写真・photolibrary)
歩道の隙間、建物の陰、水面……街を歩くとあちこちで雑草に出会います。「それぞれの植物たちが、すばらしい“個性”を秘め、それらを武器として生きぬいてきている」と語るのは、甲南大学名誉教授の田中修さんです。今回は、田中さんの著書『雑草散策-四季折々、植物の個性と生きぬく力』から一部を抜粋し、身近な雑草たちを紹介します。

ひっつき虫の代表

秋に、マメ粒より一回り大きい虫のような格好の実をつける植物があります。大きな葉っぱが目立つ、大型の植物です。キク科の雑草のオナモミです。数十年前には、野原や空き地、川の土手などによく育ち、いっぱい生えていました。

この果実には、多くのトゲがあります。衣服などに投げつけると、よくくっつきます。そのため、その果実は「ひっつき虫」とよばれました。動物のからだや私たちの衣服にくっついて移動するタネの代表です。私が子どものころには、子どもたちがこの果実を投げて遊んでいました。

この植物は、近年、極端に少なくなってきましたが、そう思っていたら、都市部の空き地に突然生えてきて、びっくりさせられることがあります。

たぶん、郊外から、人や動物によってタネが運ばれてきたのでしょう。