硬いものに激しくぶつからなくても骨折する?
このような状況をまねいているのには、明確な理由があります。
背骨の変形は20代から少しずつ始まり、年々進んでいくのですが、女性に限っては50〜60代でその傾向が顕著になるのです。
その背景には、閉経に起因する椎体骨折(通称:圧迫骨折)が存在します。
女性が閉経を迎えると卵巣の機能が低下し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が著しく減少します。
エストロゲンの働きはさまざまありますが、そのひとつに「骨密度の維持」があり、エストロゲンの減少にともなって骨がどんどん弱くなってしまうのです。
これが、椎体骨折の発症率を大幅に上げる要因になります。
骨折と聞くと、ほとんどの人は「硬い地面の上で転倒したとき」「スポーツで激しい接触プレーがあったとき」「交通事故で自動車とぶつかったとき」など、体に強い衝撃を受けた際に発生するものという認識をお持ちでしょう。
しかし、高齢になってからの椎体骨折は違います。硬いものに激しくぶつからなくても起こります。
日常生活の最中、たとえば物を持ち上げる際や軽い尻もちをついた際に発生するケースが大変多いです。骨粗しょう症が引き金となって圧迫骨折に至った際は、痛みを生じないケースが非常に多いのです。
知らず知らずのうちに、気づいたら骨折していた―それが椎体骨折なのです。
だから整形外科医はこれを、「いつの間にか骨折」と呼んでいます。
※本稿は『人は背中から老いていく』(アスコム)の一部を再編集したものです。
『人は背中から老いていく』(著:野尻英俊/アスコム)
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