小説『神の汚れた手』など多数のベストセラーで知られる作家・曽野綾子さんが、2025年2月に逝去されました。曽野さんは小説のほか、近年では老いについてのエッセイも手掛けていました。そこで今回は、老いを充実させる身辺整理の極意についてまとめられた著書『人生の後片づけ: 身軽な生活の楽しみ方』から一部を抜粋し、ご紹介します。
仕事の片手間に料理をする理由
私の本業は作家なのだが、私はほとんど毎日、仕事の片手間に料理をする。
他人に理解していただきやすい理由としては、コンピューターの前に長く座っていると、体、ことに背骨によくない、と言われているからだ。立って歩き廻れば、確かに血の巡りもよくなるだろう。
しかしどうもそれだけの理由で料理をしているのではない。私の道楽のような欲求の中に、家の中にある食材をすべて使い切りたい。それもできることなら、うまく調理して食べてしまいたい。
その結果、冷凍庫、冷蔵庫、食材置き場などにあるものをきれいに整理してしまいたい、という実に不純な複数の動機があるからのような気がする。