日本は実に豊かな選択のできる国
しかし大きな口はきけない。私の性格の中に、「ああ、めんどくさい」「どうしたら簡単にできるだろう」という料理人としては基本的な誠実さに欠けるところがある。
かつおぶしのお出汁をていねいに取る時もあるが、粉状の調味料を使ってごまかす日もある。日本はそのどちらの道も可能という、実に豊かな選択のできる国なのである。
東京生まれの私が、昨今では12月にフキノトウを探して見つけている。海の家では、7月にセミが啼き、ウグイスも囀っている。嘘ではない。自然は生命そのものだから、常に驚きを用意してくれているのである。
※本稿は、『人生の後片づけ: 身軽な生活の楽しみ方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
『人生の後片づけ: 身軽な生活の楽しみ方』(著:曽野綾子/河出書房新社)
「50代、私は突然、整理がうまくなった」
いらないものを捨て、身軽な暮らしを楽しむ。
豊かな老いへの知恵溢れる、身辺整理の極意。