海上自衛隊の特殊性
誤解を招かないように繰り返すが、私は別に松下元や山本五十六の言葉自体がけしからんと言っているわけではない。今でも海上自衛隊で大事にしていることにも異論はない。私が言いたかったのは、海上自衛隊の特殊性だ。陸上自衛隊や航空自衛隊では、このようなことはないということだ。
なぜ、海上自衛隊だけ、こういうことが起きるのか。それはおそらく、旧海軍は旧陸軍と比べれば、合理的で素晴らしい組織だったというイメージがどこかにあるからではないのか。だが、それは大きな間違いである。前述したように、海軍は先の大戦で数多くの失敗を犯しているし、その検証も十分にできていない。
それにもかかわらず、無邪気に松下元や山本五十六の言葉をありがたがる風潮を生み出したものは何なのか。それは、旧海軍から引き継がれた伝統に批判的なまなざしを向ける姿勢の欠如であると私は考える。
※本稿は、『自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『自衛隊に告ぐ-元自衛隊現場トップが明かす自衛隊の不都合な真実』(著:香田洋二/中央公論新社)
戦後80年間の平和に浴し、自衛隊は有事に闘えない組織になってはいないか。
「これは、誰かが言わなければならないことだ」。
元・海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)が危機感と使命感で立ち上がった。




