菊池 コンサートホールに行くというのは、演奏の実在を確認する場でもあるというか。もちろん生の音を確認する場でもあって、「画面越しで聴いた音と生音では違う響きだった」とか「画面越しではエッジが立っている印象だったけれど実際に聴くとまろやかな音だった」とか、いろいろなことを感じられると思う。

石井 ライブ配信とライブ公演、亮太くんが考える理想の比率は?

菊池 ライブ配信もライブ公演もそれぞれのよさがあると思うから、半々くらいかな。ライブ公演は人の熱気や生命エネルギーが大量にあふれ、包み込まれるような感じがあって、お客さんに助けられる部分がすごくあると思う。だから自分の演奏ではちょっと納得いかない部分があったとしても、全体としてよかったら、いい印象で終われる。

石井 リアルイベントの熱気だよね。それはすごくわかる。

菊池 それに対して配信は、映像がずっと残ってしまうというプレッシャーがある。だからこそ、自分に対してストイックでいるために、配信もがんばりたいっていうのはあるよね。

石井 そうだね。配信って、撮影現場が殺風景だから孤独で、メンタル的にはきつい(笑)。ただ、すべての人がライブ公演に来れるわけではないから、ちょっと聴いてみようという人が配信を楽しんでくれればいいかなと僕は思ってる。

寝そべりながら、ワイン飲みながら配信を見てもらって、新たな曲を知って人生がより豊かになってくれたらそれでいいなって。生の公演のほうがおもしろいよ、というのも伝えたいけど(笑)。

菊池 言うなれば、旅行と同じだよね。たとえば、京都に興味を持ったとき、現地に行けば実際の京都を見ることができる。でも、写真やYouTubeで京都の風景なんかを見るよさもある。もしかしたら、実際の京都と、写真や映像で見て自分が憧れを抱いた京都のイメージは違うかもしれないけれど、どちらも京都だと思うんだよね。僕は、どっちのよさもあると思ってる。

石井 リアルな京都と、幻想の京都ってことか。理想として描いたイメージにもよさがあるってことだね。

菊池 そう。自分の理想の京都も京都。だから、ライブ配信やYouTubeの動画も、それはそれで今の時代に適した楽しみ方だと思うんだよね。ライブ公演というのは、もちろんそこに真実があるんだけれど、ずっと座って聴かなければいけなかったりとか、途中でトイレに行けなかったりとか、いろいろな懸念があるじゃないですか。配信は生音ではないけれど、リラックスしながら、自分が好きな部分をかいつまんで見たりできるから、それも楽しみ方の一つ。

石井 わかる、わかる。

菊池 上下があるわけじゃないし、生演奏のほうがいいよって言うつもりはないんだよね。でも、「コンサートに一度はおいで。楽しいよ」とは思う(笑)。

石井 京都の話、めっちゃ腑に落ちた。後で続きを聞かせて(笑)。

 

※本稿は、『これが規格外の楽しみ方! たくおん式なるほどクラシック』(石井琢磨:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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これが規格外の楽しみ方! たくおん式なるほどクラシック(石井琢磨:著/KADOKAWA)

「クラシックをもっと身近に感じてほしい」YouTubeの登録者数32万人(2025年6月現在)、アルバム発売の全国ツアーでは総動員数1万人を記録した、今注目のピアニスト石井琢磨氏が解説するクラシック音楽の魅力と新しい楽しみ方。初めてクラシックに興味を持った人が聴くべき音楽家、名曲の魅力など、著者独自の視点で解説。