2025年4月から、各医療機関が都道府県知事に「かかりつけ医機能」を持つことを報告する「かかりつけ医機能報告制度」が施行されました。日常でよくあるさまざまな症状について「どこに相談したらいいかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、家庭医療専門医として健康問題を幅広くサポートする、鹿野クリニック院長・鹿野耕太先生の著書『町医者2.0 病気やケガのよくある症状を診察室でぜんぶ聞いてみた』から、一部を抜粋してご紹介します。
最近、夫が道に迷うようになりました
最近、夫が道に迷うようになりました。トラブルも起こすようになってしまって、もうヘトヘトです……(70代女性)
妻:最近、夫のもの忘れがひどくて……。さっき言ったこともすぐ忘れて、何度も同じことを聞くんです。正直、もう疲れてしまって……。
医:もの忘れが目立ってきているんですね。
妻:それに、最近いつも通る道なのに、車で道に迷ったり。この前なんて、スーパーでお金を払わずに出ようとして、警察から連絡があったんです。
医:いろいろとトラブルが起きていますね。
妻:認知症を調べてほしいです。どうしていいかわからなくて、もうヘトヘトです……。
医:大変な状況とお察しします。今のつらい状況を一刻も早くなんとかしていきましょう。
認知症とは、記憶力や判断力が徐々に落ち、日常生活に支障が出る状態のことです。認知症の本人は、自分の状態に気づいていないことが多いため、家族がトラブルや負担を感じて受診を決めるケースがほとんどです。代表的なアルツハイマー病をはじめ、根本的な治療法は確立されていないため、薬物療法や生活環境の調整、家族への支援を組み合わせて、安心して負担が少なく過ごせるよう援助することが診療の中心となります。