茶道は日常に豊かさをもたらしてくれる
たとえば、仕事で疲れた夜、家事の合間、週末の静かな朝。そのような日常のどこかに、ほんの5分間だけでもお茶時間をつくってみてください。
20代の女性の生徒さんは、初心者で茶道教室にいらっしゃいました。お道具も何も持っていませんでしたが、お抹茶でほっとすることに気づき、週末、おうちでお抹茶を点てるようになったそうです。
はじめは家にあるカフェオレボウルに、スーパーで買ってきたお抹茶を、スプーンでひとさじ。お湯を注いで、茶筅でくるくるとかき混ぜただけでしたが、抹茶の鮮やかな緑色が目の前で広がり、ふわっと鼻先をくすぐる香ばしさが漂うと、それだけで心がほぐれるのを感じたそうです。
茶道は、日常に豊かさをもたらしてくれる文化です。完璧さよりも、誠実さを。形式よりも、想いを。それが、千利休が示してくれた「茶道は、だれにでもひらかれている」という大切なメッセージであり、私たちが今、この時代に受け取るべき、茶の湯のやさしさなのです。
忙しい日々のなかで、誰かのためにばかり時間を使って、自分のための時間を忘れてしまいがちです。けれども、一碗のお茶を点てて味わうひとときは、自分自身と静かに向き合うためのかけがえのない時間です。
はじめの一歩は、身近にあるお道具で、自由なやり方で、まずは一服のお茶を、自分のために点ててみてください。それだけで、茶道の世界はあなたにそっと扉を開いてくれます。
※本稿は、『一日5分で自分をリセットする ひとり茶道』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
『一日5分で自分をリセットする ひとり茶道』(著:竹田理絵/青春出版社)
本書では、お茶の効能や精神的な効果、茶道を生活に取り入れる具体的な方法を紹介。
累計7万人の生徒や体験者の具体例を盛り込みながら、心身ともに充実したライフルスタイルを実現するための、日常生活で簡単に実践できる心と体の“整え方”を提案する。