今現在、医療の世界では、画像診断や創薬などで当たり前のようにAI技術が導入されています。その一方「今後この流れは加速し、診療や介護はもちろん看取りの場面まで、AIは欠かせない存在となる」と話すのが、東京科学大学特任教授の奥真也さんです。その先で医師の役割はどう変わり、日本の医療問題は解決に導かれるのでしょうか。今回その著書『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』から一部を紹介いたします。
「名医」とは
そもそも、「名医」とはどういう医師のことだと思いますか?
こう質問すると、おそらくかなりの割合の人が、医療ドラマに登場するような、膨大な医療知識に加えて独特のひらめきや観察力を武器に診断を行う医師、あるいは「神の手」と評される天才的な外科手術のテクニックを持つ医師をイメージするのではないかと思います。
少し前にヒットした医療ドラマに『グッド・ドクター』という作品がありました。
このドラマの主人公に設定されたのは、一度読んだ医学書はすべて暗記してしまう驚異的な記憶力を持ち、また鋭敏な観察力も持つサヴァン症候群(発達障害に伴って現れる、特定分野に突出した能力を持つ症状)の青年医師でした。
この主人公が患者と対峙すると、同僚医師たちは気づかない病変にいち早く気づき、彼の頭脳にインプットされている膨大な医学知識のなかからベストの治療法を選択して治療してしまうのでした。