
つい、私も何時まで作れるだろうかという思いが浮かぶ…(写真:stock.adobe.com)
気になるニュースや家族のモヤモヤ、日々の生活で感じたさまざまな思いや誰かに聞いてほしい出来事など、読者からの投稿を紹介するWEBオリジナル投稿欄「せきららカフェ」。今回ご紹介するのは、50代の方からの投稿です。夫から料理の食材選びから調理法、野菜の切り方まで注文が入ると嘆くまき貝さん。しかし、春に急死した母のことを思い出すと――。
そっと試してみた味は
何を食べたい?と訊けば何でもいいよなんて、返事が来る人が羨ましい。
うちは食材選び、調理法や野菜の切り方、味付けにも注文が入る。前に、オリジナルな組み合わせの料理を作りたいと伝えたら、正統派を好む夫はしなくていいと。全てがこの流れという訳ではないが、素材を生かす料理が多く、美味しいけれど私の腕では単調になりがちだ。
そこで、そぉっと味のアレンジを試す事にした。といってもほんの少しオールスパイスや和辛子、柚子などを、例えば酢みそに忍ばせる。そんな僅かな変化と組み合わせの意外性は面白い。
妙に敏感な夫の舌も今のところ美味しいと言うので良さそうな具合。これ、何を入れたの?と、質問されるスリルもあって続けたい。
春に急死した母が死の直前に作ったのは、食欲の落ちた父に食べさせるお粥だった。
それでつい、私も何時まで作れるだろうかという思いが浮かぶ。
考えると、夫のリクエストに答えられるのは私しかいない。難しい人だった父の為に、母が作り続けてきたそのように。
そんなことを考えていたら、身体の底からむくむくと、母を手本に最期の日までやり切れる、そんな力が湧いてきた。母には、とてもとても敵わないけれど。
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