2018年にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した筑波大学名誉教授・谷川彰英先生は、苦悩と絶望に追い込まれながらも、「今の自分にできること」として、その後も何冊もの本を書いてこられました。今回は、そんな谷川先生の著書『ALS 苦しみの壁を超えて――利他の心で生かされ生かす』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。
恐怖と闘った日々
その日まで私は風邪一つ引くこともなく元気に仕事をしていました。ところが悪魔のような運命が突如襲いました。7年前の2018年2月19日の夕方のことでした。突然食事が喉を通らなくなり、1週間で体重が10キロも落ちてしまいました。
当時はテレビ出演などもあってダイエットを試みていたのですが、1キロ2キロ落とすのも大変な思いをしていました。それなのに1週間で10キロ! これは恐怖でした。自分の体の中で確実に異変が起きている! 最初は膵臓がんを疑ったのですが、簡単な検査でその疑いは晴れました。
体重を落とさないように毎日水をがぶ飲みしていたのですが、それが原因だったのでしょう。ある晩頻尿が止まらず、翌朝病院の泌尿器科に行って診てもらったら前立腺がんの疑いがあると言われ、県のがんセンターで検査を受けたところ、前立腺がんの宣告を受けました。
この時期が今考えると最も苦しい日々でした。がんの強い薬を誤って飲んでしまい意識を失ってスーパーの駐車場で倒れ、救急車で病院に搬送されたこともあります。