しゃべれなくなる恐怖
その間放送大学の授業の他、いくつかの大きな講演もこなしましたので、しゃべれなくなるという恐怖の進行は歩けなくなる症状の進行より遅かったことは事実です。現に同年11月に北海道釧路市で開催されたオープンカレッジでは講座のナビを務めたくらいですから。
ところが、翌19年1月の末、決定的な事態を招いてしまいました。埼玉県川口市に講演に行った時のことです。その日も川口駅のホームをまともに歩ける状態ではありませんでしたが、事態はその直後起こりました。
その日の講演は講演というよりも、川口市の生活科サークルを対象にした談話会のようなものですが、すでに30年も続けてきた会でした。
会場まで車で運んでもらって、いざこれから講演となったその時のことでした。自分ではしゃべっているつもりでしたが、「声が出ていない、聞こえない」という声が会場から挙がったのです。自分では何が起こったのか皆目わかりませんでしたが、万事休す……。用意してくれたタクシーに乗り込むのが精一杯でした。
それ以降は外出を控えていたのですが、いくら寝ても寝ても寝足りず妙な夢を見るようになり、起きていても仮面ライダーの敵のショッカーが幻覚となって襲ってきました。でもその当時はそれが死の前兆だとは気づきませんでした。