パンをテイスティングしてみよう

テイスティングをつづけます。見ることを終え、ここからは嗅いだり、味わったりしていきます。

(4)アロマ 嗅ぐ

アロマとフレーバーは同じく「香り」と訳されますが、意味にちがいがあります。アロマとは鼻で感じる香り。フレーバーとは口の中で感じる香り。香りの立ち方が異なるので、分けて考えます。パンを食べる前に、香りを嗅いでみましょう。クラム(白い中身)とクラスト(皮もしくは耳)を分けて嗅ぐのがコツです。両者はまったく異なり、クラムの香りは淡いので、クラストの陰に隠れがちなのです。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

(5)食感 噛む

いよいよ食べてみましょう。ここも(4)と同じ理由で、クラムとクラストを別々にちぎって食べてみるとわかりやすくなります。

口の中に入ってくる瞬間から感じることははじまっています。唇に触れる触感、歯に当たる触感、舌に触れる感触。同じ噛む行為でも、前歯と奥歯で役割や感触は異なります。

前歯は噛み切るためのもの。前歯でわかるのはパンの歯切れです。すぐちぎれれば「歯切れがよい」、なかなかちぎれないものは「引きが強い」と表現します。引きの強さとは、すなわちグルテンのつながりの強固さです。ぱりぱりなのか、ばりばりなのか、ざくざくなのか、がりがりなのか。食感は、グルテンのつながり方や、クラストの厚さで変わってきます。

奥歯はすりつぶすために使うもの。平べったいので生地を切ることはできません。奥歯で噛むときは弾力がわかります。ふわふわ、もちもち、ぷるぷる、ふにゃ。ふわふわともちもちを同時に感じる「ふわもち」もあります。

(6)口溶け 味わう

噛むにつれ、唾液と混ざり合って生地は溶けていきます。唾液の中にある酵素のおかげで分解され、糖分に変わってくるのでだんだん甘くなってきます。唾液に溶け出した味や香りの成分が舌に触れることで、五味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)、さらには辛味や渋味を感じます。

溶け方も重要な要素。速く溶けるのか、ゆっくり溶けるのか。しゅわっと溶けるのか、とろとろ溶けるのか、ふにゃっと溶けるのか。生地感によって個性が分かれます。