今だから言える引退発表当日の裏側
そして、その日がやってきた。
2024年7月9日、私は現役引退を発表した。そしてこの日は、女子バレー日本代表がパリオリンピックに向けて、もっと正確に言うならばその前の海外合宿に向けて日本を出国する日だった。
「なぜ引退を決めたんですか?」
「どうして今引退なんですか?」
空港まで取材に来てくださった記者の方々に質問されたけれど、私は「オリンピックを頑張るために決めました」としか答えなかった。
それぐらい本気で、最後のパリオリンピックにすべてを懸けていた。
実は今だから言える話がある。
私の中ではとっくに決めていた「引退」だったけれど、自分で決められたのは「引退する」ということだけで、いつ引退を発表するのか、そもそもどんな方法で発表するのか、ということは私ひとりで決めることはできなかった。
「日本代表」というその名の通り、日本を代表する選手として活動している以上、仕方がない。しかも、キャプテンなのだからきちんとした形で発表する責任がある。周りからはそう言われたけれど、私の中でどうしてもひとつ、引退発表に関して譲れなかったのは、オリンピックを終えてから発表するのではなく、「オリンピックが始まる前に引退することを伝えたい」ということだった。