周平君の一家は…

事故だと聞いている。

下校中、駐車場から出てきた車に撥ねられた、というよりは当てられて、その場にころんとひっくり返った。

抱き起こされたときには、息をしていなかったのだという。

豊君が亡くなったのとほぼ同時期に、周平君の一家は姿を消していた。夜逃げだと噂されていたが、ほんとうの理由は知る由もない。

いまでもたまに、壮亮さんは夢を見る。

豊君と二人、周平君の家を訪ねる夢だ。

経文Tシャツを着たお母さんに案内され、お札だらけの廊下を抜ける。

居間から通じる次の間の襖を開けると、そこにはやはり大勢の人が立っている。

記憶とちがう点が、ただひとつ。

そこにいる人たちが抱えているのは、豊君の首なのである。

※本稿は、『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(竹書房)の一部を再編集したものです。

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こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(著:蛙坂須美/竹書房)

幼少期に目撃した奇妙な光景、いま思い出してもぞっとする体験。

それぞれが己の胸にあれは何かの勘違いか夢であったと封印してきた記憶を静かに呼び覚まし、丹念に聴き集めた怪異取材録。