「親の介護なんてまだまだ先のこと…」と思っていても、認知症の発症や転倒による骨折、入院がきっかけで【介護は予期せぬ形で始まる】ことが少なくありません。日本は介護制度が充実していますが、いざというとき、適切に利用するためにも介護サービスの種類や手続き方法などを知っておく必要があります。医師である著者・柴田元さんが、いざ直面した時に必要となる介護の基礎知識をまとめた著書『親の介護を考え始めたら読む本』より、一部を抜粋して紹介します。
複雑化する介護保険、公的支援制度
介護が必要になった高齢者やその家族を支援する制度が介護保険です。
この制度が導入されたのは2000年で、2024年時点で四半世紀が経とうとしていますが、介護保険制度が国民にとって分かりやすく、利用しやすいものになっているかというと、必ずしもそうとはいえない現実があります。
高齢化や核家族化のなかで家族の負担を軽減し、介護を社会で支えることを目的に、公的介護保険制度が創設されたことはたいへん画期的でしたが、現在の介護・医療の現場ではさまざまな問題が浮かび上がっています。
問題の一つ目は、年齢や要介護になった原因により、サービス対象に細かな制限が多いことです。
日本での介護保険サービス支給対象者は65歳以上(第1号被保険者)か、40歳以上65歳未満(第2号被保険者)のうち加齢に伴う疾患および国が定める特定の病気、障害を有する人たちに限定されています。
逆にいえば第1号被保険者(65歳以上)では疾患、障害を問わず全員が支給の対象となりますが、第2号被保険者(40歳以上、65歳未満)は病気や疾患によっては支給対象にはなりません。
『親の介護を考え始めたら読む本』(著:柴田元/幻冬舎)