いざというときに慌てず介護をスタートするために

三つ目は高齢者の増加に伴って国や都道府県による介護サービス、介護予防サービスはどんどん縮小されてきていることです。

自立した高齢者から要支援の人への介護予防・日常生活支援サービスが市町村の総合事業としてスタートしたのは2017年です。

同じようなデイサービスでも、介護保険によるものと市町村の総合事業によるものがあり、それぞれ利用できる範囲や費用なども異なるため、一般の人には非常に分かりにくくなっています。

また、施設入所に際しても、比較的安価な特別養護老人ホーム(以下:特養)は要介護3以上でなければ入所できません。

ちなみに介護老人保健施設は要介護1以上から入所できますが、中間施設的扱いのため、原則として長く入所していることはできません。

また、治療費用も特養と異なり、すべて施設負担となりますので、高額な薬や外用剤を使用している場合は入所を断られる可能性もあります。

これらの課題からも分かるように、わが国の介護保険制度は場当たり的な改正により、複雑怪奇な制度になってしまっているのです。

親の介護と一言でいっても考えなくてはいけないこと、やらなくてはいけないことは多岐にわたり、子ども一人ですべてを請け負うのは非常に難しく、介護に疲れて親ともども倒れてしまうケースも珍しくありません。

親にも自分にもできるだけ負担をかけないようにするためには、決して一人で抱え込まず、どこに相談すればよいのかをあらかじめ知っておくことが大切です。

介護が始まるとどんなことが必要なのか、どんな公的なサービスを受けられるのか、正しい知識を身に付けておくことで、いざというときに慌てず介護をスタートすることができます。

 

※本稿は『親の介護を考え始めたら読む本』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

 

 

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親の介護を考え始めたら読む本』(著:柴田元/幻冬舎)

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