時代が違うと老いの表現も違う
―― 稽古場では、演出家の方とストレートな意見交換をするのでしょうか。
私は「こう演じたい」と自分から押し出していくよりも、演出家の先生からいわれたことを、自分で咀嚼して表現していきたい方で、その意味では「引き出していただきたい」タイプなんです。
『破果』では、韓国で観た舞台の印象が自分の中で強烈なのですが、日本公演では台本と音楽だけ同じで、セットも、衣装も、演者も、そして演出方法もみんな違ってきます。音楽はバラードっぽいものから、ガンガン鳴らすロック調のものまで、幅広くあります。いろいろな要素がミックスする中で、今は役をいかに視覚的に見せていくかに苦心しているところですが、これから演出家の先生と、どうやって役をつくり上げていけるかを楽しみにしています。
――『エリザベート』では、少女時代のシシィから、オーストリア皇帝に嫁いで、暗殺される時の60歳の皇后まで、1人の女性の生涯を、きめ細かく演じ分けられていました。特に、老いたエリザベートの孤独と苦悩の表現は鬼気迫るものがありましたが、その経験は役に立っていますか。
60代の孤独な女性像という点では、共通するものがあるのかもしれませんが、どうなんでしょうか……。今の60代の女性たちって、みなさんお元気で若々しい(笑)。時代が違うと、老いの表現もまた違ってくると思うんですね。今回は現代社会の話ですので、観客の方にとって、あまりに違和感のある老い方だと共感していただけないだろうな、と。かといって、元気ハツラツな人物像ではないので、役づくりは本番まで、もっと追求していきたいですね。