花總まり
舞台の第一線で活躍してきた花總まりさん。女殺し屋に挑戦する(撮影:本社 奥西義和 以下同)
ミュージカル大作『エリザベート』『マリー・アントワネット』のタイトルロールをはじめ、『ベートーベン』『おかしな二人』『ミュージカル・バクダッド・カフェ』と、舞台の第一線で活躍してきた花總まり。宝塚歌劇団ではトップ娘役として、歴代最長12年以上を務めた記録を持ち、唯一無二の高貴な輝きを放ってきた。その花總が、26年3月に東京、大阪、福岡で上演されるミュージカル『破果(パグァ)』では、過酷な人生に彷徨う女性の殺し屋に挑む。新境地に取り組む心意気を聞いた。
(構成:清野由美 撮影:本社 奥西義和)

「破果」とは運命の巡り合わせ

――2026年3月上演のミュージカル「破果(パグァ)」は、韓国版がオリジナルで、主役の爪角(チョガク)は60代の殺し屋という、フィルムノワール(暗黒映画)のような異色作です。花總さんのイメージとはずいぶん違いますが、どのような気持ちで役を引き受けたのでしょうか。

まず、この作品がストーリーとして、とてもよくできているので、そこに心惹かれるものがありました。守るべき人も、守られる人もいない60歳の殺し屋女性が、孤独で厳しい人生を強いられている。そんな物語は、悲しくはあるのですが、底には静かに運命を受け入れる彼女の気高さもあります。この役を演じることで、私もまた次の一歩を踏み出せるのではないかと思ったんですね。

――ミュージカルの原作は韓国でベストセラーになった、ク・ビョンモよる小説。一匹狼のチョガクが、彼女の命を狙う青年と、否応なく戦っていくハードボイルドな内容ですが、共感ポイントは、どこにあったのでしょうか。

人生の接点というほどの強いものではないのですが、私自身、年齢を重ねてきて、50代を迎えた時に、新しい自分と出会いたいと思っていたことがあり、この役を通してそれができると感じた。そのことがあります。

宝塚歌劇団に在団中から、いろいろな役を演じたいという願いは、今にいたるまで、ずっと持ち続けています。在団中も退団後も、舞台では歴史上の人物から、想像上の妖精まで、さまざまな役をいただきました。きれいな衣装を着た、華やかな役も多く、なんて幸せなことだろうと思っていましたが、50代になったら、それだけでは自分自身がつらくなるだろうな、ということは分かっていました。そのタイミングで、『破果』のお話をいただけたので、これは運命の巡り合わせだな、と。

パグァ
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