愛のたまご
前ページで、「愛」が「憎しみ」に変わるときについて少し触れました。ここでは、さらに「愛と憎しみ」の関係について踏み込んでいきたいと思います。
基本的に、「愛」と「憎しみ」は根底が同じものであると私は考えています。人が「愛」を求めた瞬間に、心の中に「愛のたまご」が生まれています。そして、それが「愛」にも「憎しみ」にもなりうるということです。「愛」と「憎しみ」は兄弟のようなものなのです。
たとえば、前ページで触れた「愛」と「浮気」の関係の中で考えてみましょう。お互いがあくまで「浮気」であると、「恋」を楽しむための割り切った関係であると考えている限りは「憎しみ」は生まれません。それ以上に期待するものがないからです。
しかし、どちらかだけに「愛のたまご」が生まれると、「憎しみ」になる可能性が上がります。「愛」は「絆」の感覚です。「絆」というのは、相手との相互作用があって成り立ちます。つまり、相手にも「愛」を期待するのです。しかし、その期待が裏切られたとき、「愛のたまご」は「憎しみ」になります。
つまり、「愛」と「憎しみ」の違いは、「期待」に対する結果の違いなのです。相手から「愛」を得られていると実感できていれば、「愛のたまご」は「愛」に成就します。しかし、そうならなかった場合、「愛のたまご」が「憎しみ」に変貌するというわけです。「恋」や「好意」に戻ることができれば問題はないのでしょうが、人間の感情がそう簡単に調整できるはずもありません。期待通りにならない場合は「憎しみ」になる可能性が高くなります。
この「愛のたまご」は、「憎しみ」に変化するだけではありません。「愛」に成就しなかった場合、「愛に似て異なるもの」になります。それは時に「歪んだ愛」などと表現されることもあるでしょう。しかし、私は敢えてそれを愛とは区別し、「愛もどき」と名付けたいと思います。
※本稿は、『愛の処方箋』(光文社)の一部を再編集したものです。
『愛の処方箋』(著:精神科医Tomy/光文社)
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